李登輝実録―台湾民主化への蒋経国との対話



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台湾民主化の文明史的意義

本書では、独裁から民主主義に移行していく台湾を国民党政権内部から詳述しています。当時副総統という要職にあり、その後の民主化・台湾本土化を確立した李登輝氏だからこそ残せた、大変貴重な資料といえます。
ここで注目すべきは、蒋経国を通じて垣間見える国民党「独裁」の本質です。世界中にはあらゆる権威主義・独裁国家が存在しますが、その基盤は何もイデオロギーだけとは限りません。その国固有の背景、つまり文明の生理が極めて重要なのです。易性革命と華夷秩序は中華文明の根幹であり、君主の権威はすなわち国家の意思と見なされます。蒋介石から蒋経国に引き継がれた体制こそ、中華文明を体現した権威主義・独裁であり、「蒋王朝」と呼ぶにふさわしいものです。しかし、半世紀にわたって日本の統治下にあった台湾では、すでに大陸とは異なる文明が築かれていました。だからこそ、戦後やってきた「蒋王朝」を台湾人は受容できなかったのであり、民衆弾圧の歴史が繰り返されたのです。その後、台湾人による民主化運動が高まるにつれ、その政権基盤は揺らぎ始めました。台湾にある中華文明(蒋経国政権)が生き残りをかけて選んだ方法とは何か。それは自らの中に民主主義を取り込むことであり、新しい時代に適応していったと考えられます。最終的に李登輝氏によって確立された「民主台湾」はもはや従来の中華文明ではないのです。文明史的変遷という視点で本書を読み進めることは大変意義深いと考えます。



産経新聞出版
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